要件1:建設業の経営業務の管理を適切に行うに足りる能力を有するもの(経管)

適切な経営体制

経営業務の適切な管理体制を担う「常勤の役員等」は、許可申請時に、下表のいずれかの地位にある方で、略して経管と呼ぶこともあります。当該事業に「専属で従事」している「常勤」の者 でなければなりません。
法人の役員(業務を執行する社員、常勤取締役、執行役又はこれらに準ずる者)、個人の事業主(本人または支配人登記した支配人)のいずれかの地位において、建設業に関する経営業務について総合的に管理し、執行した経験等 を有していることが必要です。非常勤取締役としての経験も認められますが、申請時には「常勤」であることが必要です。

法人 法人の役員のうち常勤であるもの(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者)
個人 個人の事業主(その者又は支配人登記した支配人)

業務を執行する社員:持分会社(合名会社、合資会社又は合同会社)の業務を執行する社員
取締役:株式会社又は特例有限会社の取締役
執行役:委員会設置会社の執行役
これらに準ずる者:法人格のある各種組合等の理事等
支配人:個人事業主に代わり営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をなす権限を有する使用人(商業登記が必要)法人格のある各種組合等の理事等

経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものの基準

「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものの基準」は、国土交通省令(建設業法施行規則)に委任する形式となります。

建設業法第7条
(許可の基準)
国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 建設業に係る経営業務の管理を適切に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合すること。

この経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するもの(経管)として建設業法施行規則第7条で定める基準に適合するものは、以下の①及び②を満たすものです。

①建設業に係る経営業務の管理を担当する常勤の役員として、以下のいずれかの者を置くこと。
 イ)常勤役員等のうち1人(個人の場合は本人かその支配人)が次の(a1) 、(a2)又は(a3)のいずれかに該当する者であること。
 (a1)建設業(業種を問わず)に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
 (a2)建設業(業種を問わず)に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者
 (a3)建設業(業種を問わず)に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補助する業務に従事した経験を有する者
 ロ)常勤役員等のうち1人(個人の場合は本人かその支配人)が次の(b1)又は(b2)のいずれかに該当し、かつ、当該常勤役員等を直接に補佐する者として(c1)~(c3)に該当する者をそれぞれ置くものであること。(※(c1)(c2)(c3)は1人が複数の経験を兼ねることが可能)
 (b1)建設業(業種を問わず)の財務管理、労務管理又は業務運営のいずれかの業務に関し、2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員に次ぐ職制上の地位にある者としての経験を有する者
 (b2)5年以上役員等としての(建設業以外の業種の)経験を有し、かつ、建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有する者
 (c1)許可を受けている建設業者にあつては当該建設業者、許可を受けようとする建設業を営む者にあつては当該建設業を営む者における5年以上の財務管理の業務経験を有する者
 (c2)同 5年以上の労務管理の経験を有する者
 (c3)同 5年以上の運営業務の経験を有する者
②適切な社会保険に加入していること
 健康保険、厚生年金保険、雇用保険について、建設業者がその加入義務が課されている保険に加入しているものであること。

規則第7条第1号ロの経験とは
 上記(b1)(b2)では、役員等に次ぐ職制上の地位や建設業以外の役員の経験も認められていますが、その一部に建設業の役員経験が含まれる必要があり、その経験は(b1)では建設業の財務管理、労務管理又は業務運営のいずれかの業務に関する必要があります。
 また、常勤役員等を直接に補佐する者(c1)〜(c3)のこれらの経験は、(b1)(b2)を置く申請事業者における経験に限られます。「直接に補佐する」とは、常勤役員等との間に他の者を介在させることなく、組織体系上及び実態上当該常勤役員等から直接指揮命令を受け業務を行うことをいいます。
 これら常勤役員等を直接に補佐する者が、財務管理、労務管理又は業務運営のうち複数の業務経験を有する者であるときは、その1人の者が当該業務経験に係る常勤役員等を直接に補佐する者を兼ねることができます。
 また、財務管理、労務管理又は業務運営のうち複数を担当する地位での経験については、それぞれの業務経験としてその期間を計算することができます。
 これら(c1)〜(c3)に該当する者の位置づけ(役職)などは、組織図によって確認されます。
 なお、常勤役員等又は常勤役員等を直接に補佐する者は、営業所専任技術者の要件を備えている場合には、同一営業所(原則として本社又は本店等)内に限って当該技術者を兼ねることができます。

「(c1)財務管理の業務経験」とは…
 建設工事を施工するにあたって必要な資金の調達や施工中の資金繰りの管理、下請業者への代金の支払いなどを行う部署におけるこれらの業務経験をいいます。
「(c2)労務管理の業務経験」とは…
 社内や工事現場における勤怠の管理や社会保険関係の手続きを行う部署おけるこれらの業務経験をいいます。
「(c3)業務運営の経験」とは…
 会社の経営方針や運営方針を策定、実施する部署におけるこれらの業務経験をいいます。

改正建設業法では、いずれにおいても経験について、旧建設業法での「許可を受けようとする建設業に関し…」という条件がなくなり、経験した建設業の業種区分によっての経験年数を求められることはなくなりました。
経営業務の経験5年又は6年以上の期間は、通算年数なので、複数の業種区分での経験を合算できます。(大工工事の許可申請で、左官工事、とび・土工・コンクリート工事 、石工事で通算6年以上など)

適切な社会保険

社会保険等について、届出の内容を記載した書面や届出を行ったことを示す書類の提出が必要です。
なお、従業員が4人以下の事業所であり、厚生年金への加入義務がないなど、加入が義務となっていない社会保険については加入している必要はありません。

保険適用除外の例
【雇用保険】
従業員が一人もいない事業所(例:役員のみの法人事業所、事業主と専従者のみの個人事業所)
【健康保険・厚生年金保険】
従業員が4人以下の個人事業所(法人事業所は従業員の数にかかわらず適用事業所となります)

なお、2020年10月時点の許可業者においては、次回の許可更新時(5年後)までは経過措置により任意加入です。(経営事項審査の見直しも以降にあると考えられます。)これら、経過措置については改正建設業法の附則において定められています。

社会保険加入が許可要件になったが、その保険料は?

国土交通省は建設事業者に対して、法定福利費を元請業者への請求額に反映させるように指導しています。
公共工事では、法定福利費の会社負担分と本人負担分の両方が予定価格に算入されるようになりました。
法定福利費とは、企業が従業員の社会保険料を支払うために必要な費用です。
元請業者に見積書を提出する際には、見積もり条件が決められているケースでも、法定福利費を内訳として明示し、納めるべき社会保険料を確保できるようにします。法定福利費を含まない建設請負契約は、建設業法の不当に低い請負契約の禁止に触れるおそれもあります。
※元請企業が、下請見積の法定福利費を尊重せず、一方的に削減したり、法定福利費相当額を含めない金額で建設工事の請負契約を締結し、その結果「通常必要と認められる原価」に満たない金額となる場合には、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがあります。

役員の交代

許可の要件に関する役員の交代などの変更が生じた場合、一部を除いて変更から二週間以内にその内容について、届出をしなければならないこととなっています(建設業法施行規則第7条の2)。建設業許可を取得する際には、こうした不測の事態に備え、経営の適正性を保つよう候補となる役員を予め決めておくことはとても大切です。経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものの基準は、会社の役員である事が要件の一つですので、予め役員を追加するなどの登記も検討しておきます。


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