要件3:建設業財務諸表~建設業許可の財産的基礎または金銭的信用
- 一般建設業許可の財産的基礎と金銭的信用の要件(いずれか一つに該当すること)
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許可申請時に「倒産することが明白である」場合を除き、下記①から③のいずれかの基準を満たすことが必要です。
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①自己資本(貸借対照表の純資産合計)が500万円以上であること
自己資本の額とは、法人の場合は貸借対照表「純資産の部」の「純資産合計」の額です。
個人の場合は、期首資本金・事業主借勘定・事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に、負債の部に計上されている利益留保性の引当金・準備金の額を加えた額をいいます。いずれの場合でも、申請日直前の財務諸表により証明します。 -
②500万円以上の資金調達能力があること
資金調達能力については、担保とするべき不動産を有していることなどで、金融機関から資金の融資が受けられる能力があるかが判断されます。この場合、申請時1ヶ月以内の預金残高証明書・融資可能証明書・固定資産税納税証明書・不動産登記簿標本などで証明します。 -
③許可申請直前の過去5年間に許可を受けて継続して建設業を営業した実績があること(許可更新時のみ)
これは、許可更新時における財産的基礎の確認方法です。決算変更届などがきちんと届出されていれば、許可更新時の財産的基礎は問題ありません。
自己資本の額(純資産合計)について、直前決算の純資産が500万円以上であれば、財産的な基礎はOKです。
開業して間もなくで、まだ決算を迎えていない場合は、資本金が500万円以上であれば良いでしょう。
もし自己資本額が500万円未満(資本金が500万円未満)の場合、500万円以上の資金調達能力があることを証明します。
預金残高証明書は申請時1ヶ月以内のものが必要となるため、常に500万円以上が口座にない場合は、残高証明書を取得するタイミングが重要です。
いくつかの銀行口座の合計で提出する場合は、全て同じ日付で取得しましょう。
会社を設立して建設業許可申請を申請するのであれば、資本金を500万円にして設立されると良いでしょう。 -
- 特定建設業許可の財産的基礎と金銭的信用の要件(すべての要件に該当すること)
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建設業法上(法第15条第3号)(施行令第5条の4)では「請負代金の額が8,000万円以上であるものを履行するに足りる財産的基礎を有すること」と規定されていますが、実際には、許可申請時に「倒産することが明白」である場合を除き、下記①から④のすべての基準を満たすことが必要です。
なお、財産的基礎は、当該許可を受ける際(更新・追加等を含む。)に判断されるものです。許可を受けた後に基準に適合しないことになったとしても、直ちに影響を受けるものではありません。-
①欠損比率が資本金の額の20%以下
・法人の場合
貸借対照表のマイナスの繰越利益剰余金が、資本剰余金・利益準備金・その他の利益剰余金(繰越利益剰余金を除く)の合計額を上回る額の額のことをいいます。
計算式:
[繰越利益剰余金-(資本剰余金+利益準備金+その他の利益準備金)]÷資本金×100 ≦ 20%
※繰越利益剰余金のマイナスをとる
・個人の場合
事業主損失が、事業主借勘定から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金・準備金を加えた額を上回る額のことをいいます。
計算式:(事業主損失+事業主借勘定-事業主貸勘定)÷期首資本金×100 ≦ 20% -
②流動比率が75%以上であること
計算式:動資産合計÷流動負債合計×100 ≧ 75% -
③資本金の額が2,000万円以上あること
資本金の額とは、次の額をいいます。
・株式会社 ……… 払込資本金
・特例有限会社 …… 資本の総額
・合名・合資・合同会社 … 出資金額
・個人 ……… 期首資本金 -
④自己資本が4,000万円以上あること
個人の場合は、所定の金額以上の預金残高証明書が必要。
法人設立直後で決算を迎えていない場合には、設立時点の資本金が4,000万円以上必要。
上記の要件を満たしているかの判断は、既存の企業は申請時の直前の決算期における財務諸表、新規設立企業は創業時における財務諸表で判断します。
許可の有効期間中に上記の基準を満たさなくなった場合でも、直ちに許可取消とはなりません。(経営業務の管理責任者や専任技術者とは異なる。)
一方、許可更新直前の財務諸表で、自己資本が4,000万円未満となってしまったとき、特定建設業を廃業し、一般建設業で新規申請を行うことになります。
務諸表上で資本金の額の基準を満たさないが、申請日までに増資を行うことによって基準を満たすこととなった場合には、基準を満たしているものとして取扱われます。(登記簿標本にて確認できる場合に限る。) -
- 建設業許可用の建設業財務諸表
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建設業用の財務諸表は、税務申告用の決算書から「建設業法施行規則別記様式第15号及び第16号の国土交通大臣の定める勘定科目の分類を定める件」に従って作成しなければなりません。建設業法で求められる財務諸表は、原価報告を義務付けています。建設工事では原価管理が重要です。原価管理により適正な工事価格を計算し、それを元に適正な経営を行うことができます。この原価を建設業法では完成工事原価と呼び、材料費・外注費・労務費・経費の4項目に分類し、報告するよう義務付けています。
基本的には、税務申告用の決算書から、一部の勘定科目を建設業法規則の指定する様式に振替えたり転記して作成します。消費税の処理は、課税事業者は税抜方式で作成し、会計処理方法について、法人は「注記表」、個人は貸借対照表の「注」で記載します。(経営事項審査申請をする場合は、「消費税抜」で統一します。)建設業財務諸表では千円未満の数値は、「切り捨て」・「切り上げ」・「四捨五入」のいずれかの方法に統一し、端数処理をした金額を千円単位で記載していきます。
途中で出てくる合計金額は、各科目の端数処理後の金額を合計するのではなく、端数処理をする前の円単位の合計金額を端数処理して記載します。
千円未満の端数を処理して記載するので、端数処理をした金額をそのまま計算すると合計金額は決算書とずれてしまいます。
そのため、建設業法の財務諸表の中だけでは、各科目の合計との不一致もありますが構いません。
なお、建設業許可の手引き(宮城県)でも、財務諸表作成の際、千円未満の「切り捨て」・「切り上げ」・「四捨五入」の指定はされていません。
※千円未満端数処理を「四捨五入」にすると、比較的金額が一致しやすい傾向があります。(本資料は四捨五入により作成している。)もし貸借対照表の純資産合計が500万円未満の場合、500万円以上の資金調達能力があることを添付書類として証明する必要があります。具体的には担保とすべき不動産を有していることによる融資可能証明書、預金残高証明書(申請時1か月以内)により証明します。複数の金融機関を合算する場合は、同一日付の預金残高証明書によります。
許可を取得するにあたり新たに法人を設立して設立した法人で許可を取得する場合は、決算を迎えていないため財務諸表の用意ができません。この場合、「開始貸借対照表」を用意すればよいことになっています。
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