産業廃棄物収集運搬業の許可要件

産業廃棄物収集運搬業の5要件

廃棄物処理法には、「廃棄物を排出したひと(排出事業者)は、その廃棄物が生活環境の保全上問題がないレベルに適正処理されるまで、その責任を免れることはできない。」という根本的な理念があります。
運搬業許可の際にも、法的な義務が確実に履行できるための要件として、以下の5つの判断基準が設定されています。

  • 産業廃棄物収集運搬業許可に関する講習会を修了
    申請者が、産業廃棄物の収集運搬業を的確に行うための知識及び能力が必要とされます。
    そのため、 法人の場合は常勤の取締役が、個人の場合は個人事業主が、公益財団法人日本産業廃棄物処理センター(JWセンター)が実施する産業廃棄物処理業の許可申請に関する講習会を修了することが必要です。
    収集運搬業の新規の場合、2日間の日程で受講する必要があります。
    修了証の写しは許可申請書に添付します。
    なお、「新規」の修了証は、すべての都道府県・政令市で講習会修了の日から起算して5年間です。

  • 欠格事由に該当しないこと
    法人にあっては、役員(監査役、相談役、顧問も含む)・持ち株比率5%以上の株主・政令使用人、個人の場合は、事業主が、下記に該当する場合は許可を受けることができません。
    ・暴力団員の構成員である者又は暴力団員を辞めてから5年を経過していない者
    ・暴力団員がその事業活動を支配している法人
    ・成年被後見人・被保佐人・破産者で復権を得ない者
    ・禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
    ・廃棄物処理法等の法律に違反し、罰金以上の刑の処罰を受け5年を経過しない者
    ・罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
    ・産業廃棄物処理に係る許可を取り消された場合、その取消しの日から5年を経過しない者、またはその法人

  • 運搬施設
    産業廃棄物の収集運搬は、一般的な車両では飛散・流出及び悪臭が発散するおそれのある産業廃物については、飛散・流出及び悪臭が発散するおそれのない方法で行う必要があります。
    そのため、申請者は、収集運搬に適した運搬車、運搬容器等など、運搬に適した施設を有する必要があります。
    また、継続的に運搬施設等の使用権限を有する必要があります。
    申請時点において、適切な運搬車両が必要であり、その車両の車検証の「使用者欄」に法人の場合はその法人名が、個人の場合はその許可申請者名が記載されていなければなりません。
    なお、「廃プラスチック類、紙くず、木くず、繊維くず、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリートくず、陶磁器くず、がれき類」の8品目は、通常の車両でも構いません。(走行中に飛散しないよう、シート掛け等が必要。)

  • 経理的基礎
    産業廃棄物の収集運搬業の事業を、適法かつ継続的に行なうための経理的基礎を有していることが必要とされています。
    具体的には、自己資本比率及び、直前3年間の当期純利益(経常利益)の金額、税金の納付状況等を総合的に判断されます。
    財務内容によっては、不許可となる場合、追加資料(中小企業診断士の経営診断書等)を提出することで経理的基礎の要件を満たす場合があります。

  • 事業計画
    産業廃棄物収集運搬業の事業計画の要件としては、その内容が計画的に実施され、適法であり、業務量に応じた施設や人員などの業務遂行体制を整えていることが必要となります。

事業計画とは

収集運搬業は、排出場所で積み込み、排出者から料金を受け取り、処分場に運搬した後に処分業者に料金を支払う、逆有償が特徴です。
これが時として、不法投棄等の温床になるために、廃棄物処理業は規制、監督が厳しく行われます。
産業廃棄物収集運搬業許可申請書の添付書類の事業計画とは、
 ・どこで発生したのか
 ・どのような産業廃棄物か
 ・その排出量は
 ・どうやって処分するのか…、 等を記載した計画書のことです。
事業計画には、実際に運搬するであろう計画と、近い将来運搬する可能性が高い計画とを記載することになるかと思います。
その際に、実現性の高い計画を描いておかなければ、申請先は適切な事業計画とみなしてくれない恐れがあります。

  • 産業廃棄物を品目ごとに記載
    運搬の許可を持っているからといっても、何でも運搬できるわけではありません。
    「どのような廃棄物か」を、産業廃棄物処理業の許可は、記載した品目に応じて出ます。
    品目を指定されて許可が出るので、許可が出た品目のみしか扱うことはできません。
    なお、1枚の許可証には複数の品目を乗せることが可能ですので、新規で許可を取得する際には、考えられる多くの品目の許可を取得する方が一般的には望ましいです。
    品目を追加するとなると変更許可という別の許可申請が必要になってきます。

  • 事業計画の運搬量は実現可能な作業量を
    事業計画には、運搬する廃棄物の運搬量を記載しなければなりません。
    これは、現場から排出される量と、収集運搬業者の運搬施設の能力、そして処分場の処理能力を勘案して計画します。
    例えば、ガソリンスタンドから廃タイヤ(廃プラスチック類)1万本が排出されることは、まず考えられません。月に100tの木くずを軽トラ1台で運搬するというのも、無理があります。
    また、処分場にはたとえば破砕機があり、その破砕機には処理能力があります。
    処理能力を超えた運搬量を計画すること自体、無計画な計画と言えるでしょう。
    運搬量は、様々な要素を勘案しながら適当な量を算定します。

  • 産業廃棄物の搬入先
    廃棄物の搬入先について、例外もありますが、一般的には次の3つが多いと思います。
    ・中間処理場
    ・最終処分場
    ・積替保管施設
    事業計画に記載する運搬先のほとんどが、中間処理場へ持ち込むケースです。
    中間処理には、破砕、圧縮、焼却、選別、脱水など様々な処理方法がありまが、中には性状から、不適切な処理方法もあります。
    たとえば、がれき類を破砕することはありますが、石綿含有産業廃棄物であるがれき類を破砕するというのは、当然認められません。
    また、汚泥の焼却施設というものはありますが、建設現場から排出された汚泥を焼却施設に持ち込むことはありません。
    排出場所と処理方法の整合性がとれていなければ、事業計画として不適切ということです。
    他にも、リサイクル可能な産廃をいきなり最終処分場に持っていく計画も、不適切でしょう。

欠格要件

廃棄物処理法等、一定の法令等に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者は、許可を受けることができません。
一定の法令とは以下の法令に関するものです。
・廃棄物処理法
・浄化槽法
・大気汚染防止法
・騒音規制法
・海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律
・水質汚濁防止法
・悪臭防止法
・振動規制法
・特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律
・ダイオキシン類対策特別措置法
・ポリ塩化ビニフェル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法
・暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(第31条第7項を除く。)
・刑法第204条(傷害)
・刑法第206条(現場助勢)
・刑法第208条(暴行)
・刑法第208条の2(凶器準備集合及び結集)
・刑法第222条(脅迫)
・刑法第247条(背任)
・暴力行為等処罰に関する法律

産業廃棄物収集運搬業許可の経理的基礎

個人事業主の場合は、資産に関する調書(経理的基礎に関する書類(第9面))と、直近3年間の所得税納税証明書(その1)により、法人の場合は、直近3年間の貸借対照表、損益計算書、法人税納税証明書(その1)、などの添付書類によって財務状況をチェックされます。
財務状況が悪いと、経費節減のために廃棄物の適切な処理を行わず不法投棄などの問題が出てくる懸念があるためです。
基本的には直近3年間で利益が計上出来ている事が判断基準ですが、直近3年間の平均で赤字であっても…、
・直近の決算で利益が計上できている 。
・直近3年間の内、一期でも自己資本比率(純資産÷総資本)が10%以上である。
 法人の場合:自己資本比率が10%を超えていない場合であっても、少なくとも債務超過の状態でなく、かつ、持続的な経営の見込み又は経営の改善の見込みがある。
 個人の場合:資産と負債を申告し、資産が負債を上回る。
以上の場合は、許可される見込みがあります。

条件がクリア出来ない場合であっても、長期収支計画書等の追加書類を提出する事によって、対応可能な場合もありますので、財務状況が良くないからと言って許可取得を諦める必要はありません。
また開業直後で決算書類等がない場合も同様に、長期収支計画書等の追加書類により対応可能です。


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